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8月13~16日は「旧盆」。NHK「深読み読書会~夏目漱石『三四郎』」批評。

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■ 8月13~16日は「旧盆」(別称「月遅れ盆」)


「お盆」には門口や玄関で火を焚く習わしがある。
13日の夕方に焚かれる「迎え火」は、あの世から帰って来た先祖や亡くなった人々(故人)の霊が迷わないための目印で、煙とともに霊が家に入って来るのをお迎えする役割を果たす。
16日の夕方に焚かれる「送り火」は、あの世へ戻る霊をお見送りする役割を果たす。「京都の五山の送り火」は全国的によく知られている。

因みに、我が家が信仰する浄土真宗では、亡くなった人々(故人)は極楽浄土に往生して仏様になると考えられているため、この世に魂が戻るとは考えないので霊を迎えるという習慣が無く「迎え火」や「送り火」は行われない。そのため精霊棚の準備はせず提灯を飾って仏様とご先祖様に謝意を捧げる習慣である。


*

 

 

昨晩、我が家のベランダに虫が訪ねて来て、「ジッジッジッ」と鳴いていた。

最初は夫婦それぞれ自分の耳鳴りが大きくなったのかと怯(ひる)んだのだが、

降り頻る雨を避けて来た昆虫と分かり、妻が懐中電灯を照らし私がデジカメでストロボ写真を撮った。外見からするとコオロギの仲間だと思う。

 

20210813--22:13

 

  

 

 


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■ NHK-BSプレミアム「シリーズ深読み読書会」

 

「夏目漱石“三四郎”~108年目のプロポーズ~」



□ 再放送: 2021/8/12(木)午前0:44~1:43

      初放送: 2016/12/9(金)22:00~22:59


□ 出演

読書会: 鈴木杏(女優)、猪瀬直樹(ノンフィクション作家、元東京都知事)、島田雅彦(ミステリー作家)、朝吹真理子(エッセイスト)、小倉千加子(フェミニスト)、松浦純(ドイツ文学者)。

ドラマ(静止画): 小池翼(23才、小川三四郎役)、高橋マリ子(23才、里見美穪子役)、光根恭平、佐伯啓、伊原律、中村仁美。



語り: 角田誠二(NHK)。



□ 概要


長編小説として1908年9月1日~10月5日校了(この放送の約108年前)~12月29日朝日新聞連載。春陽堂・単行本1909年5月刊行。

青空文庫「三四郎」全文
 

「それから」(1909年連載)、「門」(1910年連載) へと続く前期連作三部作の一つ。


主人公の三四郎(23)が、都会の様々な人との交流から得る様々な経験、恋愛模様が描かれ、元祖“青春小説のバイブル”と称されている。
三四郎や周囲の人々を通じて、当時の日本が批評される。三人称小説であるが、視点は三四郎に寄り添い、時に三四郎の内面に入っている。「stray sheep(迷える子羊)」という言葉が随所に出て来る。

だが、この小説には様々な謎が隠されており、現代流に言えば東京の最先端を描くトレンディー小説とも、あるいは“草食系男子”に“オタク理系男子”まで登場する婚活小説とも。

漱石ファンの“文学探偵”たちが“秘密の読書会”を開催し、徹底的に読み解く。



*



□ 私の批評



★ 暗喩 [隠喩、metaphor(メタファー)]的な言葉として登場する-----

「stray sheep(迷える子羊、迷羊)」・・・決して越えられない家父長・男尊女卑の因習の城壁内で、自我意識の解放(出口)を求めて葛藤を繰り返す新しい時代の女性像。決してハイカラな上流社会の生活に満足していない、女主人公・里見美穪子に投影されている。


★ 明喩 [直喩、simile(シミリ)]的な言葉として登場する-----

「矛盾」・・・時代背景は、日露戦争に偶々外交的に勝利した(1905年)にも拘わらず、国家・国粋主義的教育(永続的な天皇統治の国体) と第二次産業革命(重化学工業・軍需産業の偏重)。
立身出世が手に届くインテリ層に立っている(立ち位置に在る)と思っている実在に対し、次第に暗雲が漂って来ているという自我意識(個人主義指向)を禁じ得ない、主人公・小川三四郎に投影されている。

⇒ かくして漱石自身は1907年、文部省から誘われた英語教育学教授の道(生臭い出世欲)を捨てて、余裕を持って人生を眺めようとする低徊趣味(漱石の造語)の小説家を選択して行く。



*



□ 詳細

出典はWikipedia他。


東京帝国大学文科大学(現在の文学部)に合格し、郷里の福岡県京都(みやこ)郡真崎村から上京し、本郷区駒込追分町(現在の文京区向丘1/2丁目)に下宿する小川三四郎(23)【漱石の弟子であるドイツ文学者・小宮豊隆をモデルにした】。

熊本の高校時代は赤酒ばかり飲むなど酒も煙草も嗜(たしな)むが、生真面目な堅物。たまたま列車に乗り合わせ、間違って相部屋にされた女性にも無用の気を遣い、別れ際に「貴方はよっぽど度胸のない方ですね」と詰(なじ)られる。

「女性」という生き物に対する免疫など全くない初心な青年だった。

三四郎は大都会・帝都東京で人の多さに辟易(へきえき)する。同郷で理科大学(現在の理学部)教師・光線圧力研究者の野々宮宗八【物理学者・寺田寅彦をモデルにした】を訪ねる。

帰りに大学構内の池 (加賀藩前田家の「育徳園心字池」、後に「三四郎池」と愛称) の畔で団扇(うちわ)を手にした若く美しい女性・里見美穪子【みねこ、女性解放運動家・平塚雷鳥をモデルにした】を偶然目にする。

宗八と再び会った三四郎は共に本郷を散歩する。7つ年上の宗八(30)は散歩の途中に用品店で女物のリボンを購入する。

9月に講義が始まり、三四郎は隣の席の佐々木与次郎【漱石の弟子である児童文学者・鈴木三重吉をモデルにした】と友人になって、洋食屋「淀見軒」に誘われライスカレーを食べる。

三四郎は与次郎から「つまらない講義に耳を傾けるより、世間の風というものを入れ給え」と忠告される。

与次郎から野々宮宗八が探していたと聞かされた三四郎は宗八に遭いに行き、同郷の誼(よしみ)で三四郎の実家から贈られた品々への礼を言われて自宅に誘われて、三四郎は宗八の妹・野々宮よし子と引き合わされる。

一方、与次郎が「先生」と慕う一高の英語教師・広田萇(ちょう)【ドイツ哲学者・岩元禎をモデルにした】の引っ越しが決まり、手伝うことになる。

三四郎は、広田の新居で偶然にも美穪子と再会し名刺を渡され、花は必ず剪(き)って瓶裏(へいり) に眺むべきものであると悟る。

三四郎と美穪子は新居の掃除を2人で行うことになって、2階に上がった美穪子は空を見上げて雲の形に見惚(みと)れていた。三四郎はそんな美穪子に惹き込まれて行く。

荷物を運び入れた与次郎も合流し、荷解きするうちに広田も帰宅する。与次郎は広田を「偉大なる暗闇」と評し、折角多くの書籍を読んでいるのにちっとも光らないとボヤく。

一方、宗八も海外での高い評価に対し、国内では安い給料で雇われて穴蔵に閉じ込められていると評する。そんな与次郎の人物評に広田は君はせいぜい丸行灯で二尺程度を照らしているだけだと叱責する。

美穪子が差し入れとして持ち込んだ大きなバスケットに一杯のサンドイッチを振る舞ううち宗八もやって来る。広田家は賑やかだった。与次郎は広田家の2階に居候するつもりでいた。

話題が変わり、与次郎の翻訳に広田が難癖をつけ、宗八が原文を問うと、透かさず美穪子が英文を口にする。美しさだけでなく教養も光る美穪子に、三四郎はますます関心を抱く。

一方、宗八はよし子を里見家に居候させようとしていた。

美穪子には兄が2人いたが、亡くなっていた長兄と親友だったのが広田で、次兄と同窓だったのが宗八だった。

そして美穪子は野々宮家に度々、出入りしていた。

三四郎は団子坂 (現在も湯島天神で毎年開催) の菊人形見物に誘われる。 菊人形見物に繰り出した美穪子、よし子、広田、宗八に同行した三四郎の一行は、雑踏で物乞いや迷子とすれ違う。だが、広田も宗八も「場所が悪い」と関わり合いを避ける。

すると美穪子は「気分が悪い」と言い出して、三四郎を連れ出し一行から離れる。「気分が悪い」というのは美穪子の口実に過ぎず、本当は「気分を害した」のだった。

重苦しい曇り空を「大理石」と評する美穪子。2人が逸(はぐ)れたことで宗八たちが慌てていると三四郎は心配するが、大きな迷子だからと美穪子は取り合わず、責任を持ちたがらない人たちだからと流してしまう。

そして、三四郎に迷子の英訳「stray sheep」を教える。

泥濘(ぬかるみ)を避けるために置かれた石を三四郎はひらりと飛び越えるが、美穪子は不安定な石に足を取られ、三四郎に抱き掛かる形で倒れてしまう。美穪子は三四郎の腕の中で「stray sheep」と囁(ささや)くのだった。

講義に身が入らない三四郎はノートに「stray sheep」と書き殴るようになる。

一方、広田が新居を借りるに当たり宗八から借りた20円を、預かった与次郎が馬券でスッてしまったと相談され、三四郎は仕送りから20円を立て替えてやる。与次郎は三四郎が立て替えた20円の工面をつけようとし、美穪子からアテを得たものの三四郎が来ないと渡さないと言われてしまう。

三四郎は里見家に赴き、美穪子は預金通帳と印鑑を三四郎に渡し、好きなだけ使いなさいと告げる。

また画家・原口【洋画家・黒田清輝をモデルにした】の開く絵画展のチケットがあると美穪子は三四郎を誘う。しかし宗八と鉢合わせた美穪子は、三四郎に何かを囁く挙動に出た後、それが宗八への当て付けの意味があったことを仄めかす。

三四郎は美穪子に恋をしている自覚を持つが、美穪子の真意を理解できない。

三四郎は冬物を買いに出た日に、香水を買いに来た美穪子とよし子に偶然出会い、品定めを任され、ヘリオトロープ(別名キダチルリソウ)を選ぶ。

郷里から臨時の仕送りを受け、原口のアトリエを訪ねた三四郎は、モデルをしている美穪子と対面し、金を返すと言い出す。

美穪子は疲れた表情を見せるようになり、原口に帰される。

そこで三四郎は、金は口実に過ぎず貴方に会いに来たのだと美穪子に告げる。

美穪子は話題を変え、描かれた服装で原口が作品に取り掛かった時期が分からないかしらと三四郎に囁く。三四郎はそれが偶然美穪子を見初めた時期だったことに気づく。

ところが、そこへ三四郎の知らない若い紳士が現れ、美穪子を車に乗せて去る。

三四郎は広田を訪ねたところ、広田は結婚というものに否定的で、恋愛についても達観した人物だということを知る。

演芸会に行き風邪を拗(こじ)らせて伏せった三四郎は、美穪子の縁談が纏まったと与次郎から知らされる。相手は宗八ではなかった。

回復後、三四郎は真相を確かめるべく美穪子宅へ行く。三四郎が美穪子に金を返すと、美穪子は三四郎が選んだヘリオトロープの香水を含んだハンカチを差し出す。「結婚なさるそうですね」と三四郎が問うと、美穪子は「ご存じなの」と、溜息を幽(かす)かに漏らした。

三四郎が帰省する間に、美穪子は兄の友人と結婚していた。

完成した原口の絵が評判となっていた。そこには池の畔で扇子を手にした美穪子が描かれていた。

原口は佐々木に売りたいと語るが、与次郎は「僕より」と絵の前の椅子に座っている三四郎を見遣る。与次郎「どうだ森の女は?」、三四郎「森の女という題が悪い」。「じゃ、なんとすればよいんだ?」、三四郎は何とも答えなかった。ただ口の中で「stray sheep、stray sheep」と繰り返す。
 


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