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7月26日は「幽霊の日」、幽霊と妖怪の歴史。

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■ 7月26日は「幽霊の日」


1825年7月26日、中村座で四世・鶴屋南北(1755~1829年)の原作、歌舞伎狂言・全5幕『東海道四谷怪談』が初演され、それに因み記念日として制定された。


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■ 日本語「幽霊」(ユウレイ、ユーレイ) のルーツ


「幽霊」という言葉は、死後の世界を意味する「幽」と、魂を意味する「霊」の合成語。

幽霊」とは、死んだ人の霊、成仏できなかった魂の姿。この世に未練や恨みがあって成仏できない死者が幽霊となって特定の因縁ある人の前に姿を表し、未練や恨みを晴らそうとする。


一方、何時の間にか、日本では「幽霊」と混同してしまった妖怪。
妖怪とは、人間の理解を超える異常な奇怪現象、それらを起こす不思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在。主として人間以外の動物や物から変化したもので、特定の場所から出現し、不特定の誰でも見境いなく脅かす。



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□ ヤマト王権(古墳)時代


仏教伝来(公伝は538年説が有力) 以前の古神道の葬儀では、鎮魂(たましずめ)の儀式によって死者の霊魂を慰める慰霊のことを指す。
仏教伝来以後の葬儀では、死後も死者の霊魂が現世を彷徨(さまよ)い「幽霊」と化さないよう、来世の浄土で生まれ変わり仏に成る==成仏しやすいように促すことを指す。


妖怪が初めて登場したのは、日本最古の歴史書『古事記』(712年に太安万侶が編纂)と歴史書『日本書紀』(720年に舎人親王・藤原不比等が編纂)。
ヤマタノオロチ(大蛇の妖怪)や鬼などが登場。当時の妖怪は、神が堕落して恐ろしい姿に変化したものとして描かれた。

 

佐藤小吉『神代物語』 (大日本図書1910年刊行)

 

 


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□ 平安時代


妖怪が神として祀られる場合もあり、神と妖怪が表裏一体の存在とされて来た。

伝承された最古の説話集『日本国現報善悪霊異記』(にほんこくげんほうぜんあくりょういき、略称『日本霊異記』、822年頃に成立)、怪異にまつわる説話集『今昔物語集』(1120~30年頃に成立) などが編纂された。


軍記物語『平家物語』(作者・成立時期とも不明) は、琵琶法師(座頭)たちが、平家没落の後に平家一門の悲劇とその「幽霊」を鎮魂を込めて語りに取り上げていた。

そんな中で生まれたのが有名な『耳なし芳一』の怪談。後世の明治時代、帰化人・小泉八雲の怪奇文学集『怪談』(1904年刊行)に取り上げられて、広く知られるようになる。

 



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□ 室町時代


「幽霊」は歌謡や歌舞伎のテーマとしても扱われるようにり、怪談という形で伝承された。

一方、妖怪の絵巻物が刊行され、妖怪の姿が絵で表現されるようになった。中でも画家・土佐光信の絵巻物『百鬼夜行図』(16世紀) は当時の代表的な作品。

 




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□ 江戸~明治時代


幽霊には足がないというイメージは、江戸時代の絵師・円山応挙の『幽霊図』(1772~81年) などによって創られた。

 




鶴屋南北の歌舞伎狂言『東海道四谷怪談』(1727年刊行)、上田秋成の読本(怪異小説)『雨月物語』(1776年刊行)、三遊亭圓朝の落語(怪談噺)『牡丹燈籠』(1861~64年頃創作、1884年刊行) などの名作が創られ、講談・落語、草双紙・水墨画・浮世絵などで盛んに描かれた。

葛飾北斎『百物語 お岩さん』

 




豊原国周『怪談牡丹灯籠』(1892年)





妖怪の伝承に基づいた『百物語』など怪談噺(ばなし)などの怪談会が大流行。多数の妖怪画絵巻や、妖怪をモチーフとした浮世絵が描かれた。
浮世絵師・月岡芳年による妖怪画の連作『新形三十六怪撰』(しんけいさんじゅうろっかいせん、1889~92年に刊行)などが人気だった。

月岡芳年『新形三十六怪撰 皿やしきお菊の霊』(1890年)

 

 


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