■ イギリス映画 「秘密と嘘」(原題「SECRETS & LIES」)
□ 再放送:
#452「洋画専門チャンネル ザ・シネマ」 2021/10/13(水)02:45~05:30
最初に観たのはテレビの再映番組で。
次にTSUTAYAのビデオレンタルで。
今度のJ:COMは3度目か4度目。
□ 製作
製作年: 1996年
製作国: 英国(UK)
上映時間: 1422分
配給: UK・FilmFour Distributors、日本・フランス映画社。
公開: UK1996年5月、日本1996年12月。
□ 概要
舞台出身のマイクー・リー監督らしく、いわゆる脚本は無く、シチュエーションとシーンの羅列を記した簡素なメモから、
役者たちとの徹底した現場リハーサルの中で即興的に作り上げられた演出手法。
出演はリー作品に欠かせないティモシー・スポール (「ハリー・ポッター」シリーズの裏切者の死喰い人ピーター・ペティグリュー役) を始め実力派が勢揃いし、主演のブレンダ・ブレッシン (「ヴェラ ~信念の女警部~」に登場) の重苦しく迫って来る演技は圧巻と言える。
この極限のリアリティーを生み心の琴線に触れるヒューマン・ドラマとして実現した。
□ 主な受賞歴
1996年、カンヌ国際映画祭・・・パルム・ドール(最高賞、マイクー・リー)、女優賞(ブレンダ・ブレッシン)。
英国アカデミー賞・・・女優賞(ブレンダ・ブレシン)。
1997年、ゴールデングローブ賞・・・ドラマ部門/最優秀主演女優賞(ブレンダ・ブレシン)。
国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞
日本のキネマ旬報外国映画ベストワン。
▽ 尚、過去の主なパルム・ドール受賞作品は、私が鑑賞した作品を中心として次の通り。
2018年「万引き家族」・・・監督: 是枝裕和
1996年「秘密と嘘」(原題「Secrets & Lies」)・・・監督: マイク・リー
1993年「さらば、わが愛 / 覇王別姫」・・・監督: チェン・カイコー
1983年「楢山節考」・・・監督: 今村昌平
1979年「地獄の黙示録」(原題「Apocalypse Now」)・・・監督: フランシス・フォード・コッポラ
「ブリキの太鼓」(原題「Die Blechtrommel」)・・・監督: フォルカー・シュレンドルフ
1967年「欲望」(原題「BLOW-UP」)・・・監督: ミケランジェロ・アントニオーニ
1966年「男と女」(原題「Un homme et une femme」)・・・監督: クロード・ルルーシュ
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□ スタッフ
監督・脚本: マイク・リー
音楽: アンドリュー・ディクソン
撮影: ディック・ポープ
編集: ジョン・グレゴリー
□ キャスト
ブレンダ・ブレッシン: シンシア・ローズ・パーリー・・・主人公の42歳シングルマザー。箱を製作する工場に勤め弟と娘を育てた。
ティモシー・スポール: モーリス・・・写真家。シンシアの弟、写真スタジオが繁盛し新居を構えることができた。
フィリス・ローガン: モニカ・・・モーリスの妻。秘密裏に励む不妊治療に15年間も苦しんで来た。
エリザベス・バーリントン: ジェーン・・・モーリスの助手。
クレア・ラッシュブルック: ロクサーヌ・・・シンシアの娘。市の清掃車作業員。
リー・ロス: ポール・・・ロクサーヌの恋人。
マリアンヌ・ジャン=バプティスト: ホーテンス・・・キルバーンに住む検眼士。21才のシンシアが出産直後に養子に出した黒人とのハーフの娘。
□ ロケ地
シンシアとホーテンスが最初に待ち合わせた場所・・・ロンドン地下鉄ピカデリー線&セントラル線のホルボーン駅。
シンシアとホーテンスが最初に入った広いカフェ・・・マスウェルヒル・ブロードウェイのSC。
シンシアとホーテンスが食事したパスタレストラン・・・カムデン・タウン(リージェンツ運河倉庫群の再開発地域)のエバーショルトストリート。
シンシアのアパート・・・ロンドン地下鉄セントラル線のベスナルグリーン駅前に広がるアパートメンツ群。
モーリスの写真スタジオ・・・遊歩道のウインチモアヒル・ループ。
モーリスとモニカの新居・・・ロンドン地下鉄ピカデリー線のサウスゲイト駅前に在る高級住宅地ホワイトハウスウェイ。
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□ ストーリー <ネタバレご注意>
ロンドン近郊の下町に、私生児の娘ロクサンヌと二人暮らしの白人女性シンシア。
幼くして母親を亡くし、10代から稼ぎに出かけつつ、弟の世話まで熟(こな)して来た。
教養も無くひたすら陽気なだけが取り柄で、そのお節介な性格からか夫はおろか、友人すらいないまま中年を迎えている。
若い時分のふしだらさを年頃の娘に詰(なじ)られるばかりか、彼女には何処か暗い陰りがあった。
母親に対する不満から何時もイライラしている娘ロクサーヌ。
写真家として活動し裕福な生活を手に入れた弟モーリス。
その妻モニカは浪費家に見える。
モーリスは時折り、姉の経済的援助もしている。
そんな或る日、「子供だ」と名乗る若い女性ホーテンスから、彼女宛てに電話が入る。
その実母シンシアは狼狽(うろた)え、「二度と電話しないで」と言う。
若い頃出産し顔も見ずに養子に出したもう1人の子供。
シンシアは意を決して彼女と会うことにし、恐る恐る待ち合わせ場所に出掛ける。
ところが、その待ち合わせのホルボーン駅に現れたホーテンスは、何と!! 褐色の肌の女性だった。
戸惑いを隠せず、一旦は否定したシンシア。
がしかし、確かに彼女の身には覚えがある。
その存在さえ忘却の彼方へと追い遣っていた、生まれて直ぐに養子に出した娘。
ホーテンスは養母との告別式を終えた後、生まれて直ぐに別れた筈の実母を探し始めたのだった。
そうして、出生管理局の社会福祉事務所で自分の養子縁組関係の詳細な書類を見た彼女は驚く。
黒人である自分の実母が白人だという公式文書の記述。
やがて二人が交流を重ねて行くうちに、次第にシンシアは母親としての血が湧き出し愛情が厚く通い始める。
自分が貧困の中、苦労して育てたロクサンヌの反抗的な日常に悩まされていた彼女。
無類の良い子に育てられていた娘ホーテンス。
シンシアは彼女と会うことが嬉しくて仕方がなくなり、最大の楽しみへと変化して来るのだ。
そんな外出着の母シンシアに、ロクサーヌは新しい男ができたのではないかと疑う。
様々な感情が渦巻く中、"家族"という幻想体の中で、それぞれに積もりに積もった不平不満の噴出が日々強まる。
一方、成功者である筈の弟モーリスも、妻と共にどこか救われない悲しさを抱えている。
それは妻モニカの苦しい不妊治療に取り組んでいたのだ。
姉のシンシアから告白されたモーリスは、姪のロクサンヌのことが気掛かりでならない。
妻モニカを説得して、新築の自宅にロクサンヌの誕生会を設け、新しい姪のホーテンスを招待することに決める。
シンシアもまた、ロクサンヌの誕生を祝ってくれるモーリス家の庭で、家族全員が揃う場面に対し、ホーテンスを勤め先の工場の同僚と言って紹介することに決めた。
「私の友達ということにしておけば大丈夫よ」。
誕生日当日。パーティーにはロクサンヌの恋人ポールもいる。モーリスの助手ジェーンも。
シンシアの友達に皆は最初、少し戸惑いを見せるが、モーリスは至って親切だ。
やがて誕生ケーキが出て来た時。
シンシアは幸せの余り、一気にホーテンスについての真実を打ち明けてしまう。
一同は驚き、ロクサンヌは怒って外に飛び出して行く。ポールも後を追う。
モーリスがバス停で座っていた姪とその恋人を説得して連れ戻す。
シンシアは、たった一人の可愛い息子モーリスを奪って行ったと詰る。
モニカは反論できない。
モーリスは妻が子供を生めない身体であることを明かす。
「なぜ最も愛し合うべき肉親同士が傷付け合うのか」と彼は問い掛ける。
ホーテンスに「苦痛を承知で真実を追究した君を尊敬する。もちろん君は僕の姪だ。家族として受け入れる」と言う。
シンシアはロクサンヌに彼女の父だった男のことを初めて明かす。「彼はアメリカ人の医学生で、いい人だったわ」と。
「私の父もいい人だった?」というホーテンスの問いに、シンシアは「それだけは答えられない」と言って泣き崩れた。
或る日の午後、ホーテンスとロクサンヌの姉妹は、母のシンシアと共にお茶の一時を楽しむ。
「人生ていいわね」とシンシアが呟く・・・・・。