6月末まで、「Bunkamura ザ・ミュージアム」(渋谷区道玄坂2-24-1 東急百貨店本店の隣接地)で、「印象派への旅 海運王の夢」展が開催されているので、
昨日5/24(金)午前中に鑑賞した。
鑑賞後は「道玄坂商店街」を散歩し、久し振りに「東急百貨店東横店 B1東急フードショー」で買い物した。
□「恋文横丁跡」の碑 (渋谷区道玄坂2-29-22)
一昨日5/23(木)は「ラブレターの日」であった。これは浅田次郎原作の小説「ラブ・レター」(文藝春秋社・オール讀物1996年掲載、集英社短編集「鉄道員(ぽっぽや)」に1997年収録)を松竹映画化した同名作品の公開が1998年5月23日に初日であったことに因んだ。主な撮影ロケ地は新宿歌舞伎町・千葉県千倉町など。
一方、道玄坂2丁目の交差点近くには、「恋文横丁跡」の碑が建てられており、昨日5/24(木)昼前に撮影した。
丹羽文雄(1904/11/22~2005/04/20)原作の小説「恋文」(朝日新聞社1953年掲載、角川文庫1955年刊)、およびその映画化(監督・田中絹代、脚色・木下恵介、出演・森雅之/久我美子/香川京子ら、新東宝1953年12月公開)のモデル地になった「恋文横丁」の跡地(道玄坂2-29)。
太平洋戦争後の米軍進駐期(1945年8月~52年4月)/朝鮮戦争期(1950年6月~53年7月)当時、英語のできない女性のために米軍兵相手のラブレタ-の翻訳・代筆をする「代書屋」があり主人公はここで「恋文の店」を開いていたエピソード。最盛期には36の小さな店が並び「すずらん横丁若しくは恋文横丁」と呼ばれていたが、1965年に火災によって焼失した。
そして現在ではその跡地に、「SHIBUYA109」(道玄坂2-29-1)、「ヤマダ電機LABI渋谷店」(道玄坂2-29-20)、「元祖くじら屋」(道玄坂2-29-22) などが建てられている。
□「H&M 渋谷店」(渋谷区宇田川町33-6)
□「渋谷ストリーム」(渋谷区渋谷3-21-3)・・・最新の渋谷駅前南街区の高層ビル(35F建て、2018年9月開業)。
東京メトロ銀座線一本を往復。ウォーキング3,600歩と軽め。
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■ 第1~3章の解説
★印は、特に印象に残った作品。
□ 第1章 身の回りの情景
少年の頃からビジネスの世界に身を置いたバレルにとって、外の雑踏から遮断された室内空間は心を癒(いや)す場所であり、自らを見つめ直す場所でもあったことだろう。
そんなプライベートな情景を描いた作品は私たちの心も静めてくれる。
またそこでは小振りの静物画は、親密な雰囲気の室内を演出するための必須のアイテムだったとも言える。
そして明るい印象派の手法よりも、控えめで地味な写実主義の作品の方が、そのような空間には相応しい場合もあったことだろう。
人物・果物・花など、部屋の中の静謐(せいひつ)かつ親密な情景が描かれた作品群。
1-1 室内の情景
★02カミーユ・コロー《耳飾り》 1850-55年頃、油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
★10ヤーコプ・マリス 《若き芸術家》 1878年頃、水彩・グワッシュ・紙、グラスゴー、バレル・コレクション
1-2 静物
22ポール・セザンヌ 《倒れた果物かご》 1877年頃 油彩・カンヴァス ケルヴィングローヴ美術博物館蔵
26エドゥアール・マネ 《シャンパングラスのバラ》 1882年、油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
★27アンリ・ファンタン=ラトゥール《春の花》1878年、油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
28サミュエル・ジョン・ペプロー《バラ》1900-05年頃、油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
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□ 第2章 戸外に目を向けて
産業革命が進むヨーロッパでは都市が主な生活の場となり、そこで働く人々を描いた絵をバレルは好んで集めたようだ。
街は子供たちの活動の場でもあったが、意外にもドガが描くようなバレエ教室に通う少女たちは貧しい家庭の子供で、パトロンを見つけることがその目的の一つであったと言う。
もっともドガの作品自体は考え抜かれた構図の中に稽古の緊張感を余すところなく伝える秀作で、バレルはそのような裏話には無関心だったことだろう。
また画家たちは工場から出る石炭の煙で煤けた都市を逃れて、郊外に制作の場を求めることも多かったのだが、それらの絵画を買い求めたのは都市に住む人々だった。
家の中・街中・郊外へと戸外に広く目を向けて、その景色や生活・仕事を営む人々・動物を描いた作品群。
2-1 街の中で
★29エドガー・ドガ 《リハーサル》 1874年頃、油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
★34アーサー・メルヴィル 《ホワイトホース・インの目印》 1888年、水彩・グワッシュ・紙、グラスゴー、バレル・コレクション
35ジョゼフ・クロホール 《二輪馬車》 1894-1900年頃 水彩、グワッシュ・麻布、グラスゴー、バレル・コレクション
2-2 郊外へ
40アンリ・ル・シダネル 《雪》 1901年 油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
★41カミーユ・コロー《フォンテーヌブローの農家》 1865-73年頃、油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
48ピエール・オーギュスト・ルノワール 《画家の庭》 1903年頃、油彩・カンヴァス、ケルヴィングローヴ美術博物館蔵
★50ヤーコプ・マリス 《ペットの山羊》 1871年 油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
★58ジョゼフ・クロホール 《山腹の山羊、タンジールにて》 制作年不明 水彩、グワッシュ・紙、グラスゴー、バレル・コレクション
60ポール・セザンヌ 《エトワール山稜とピロン・デュ・ロワ峰》 1878-79年 油彩・カンヴァス ケルヴィングローヴ美術博物館蔵
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□ 第3章 川から港、そして外洋へ
グラスゴーは小さな渓流が集まって大きな流れとなるクライド川の河口上流に位置する工業都市だが、バレルもまた、まるで渓流が大河になるように家業を大きくして行き、それは美術品収集においても同じだった。
彼のコレクションはフランス絵画に止まるものではなく、中世のステンドグラスやインド・ペルシア・中国の美術品に至るまで実に多岐に亘り、その数は数千点にも上る。
バレル自身は船乗りになろうとは思わなかったようだが、実際の船旅ではなく美術品の収集を通じて大海原に乗り出して行ったのだ。
本展で私たちはブーダンらの作品を通じて外洋を行く船を想像する。
バレルはグラスゴーの港で自らが所有する幾艘もの船を、どんな思いで眺めていたのだろうか。彼の思いを想像しよう。
海運王と呼ばれ、港や海への想いが人一倍強いであろうバレルが選んだ、海景画を中心とした水辺の景観の作品群。
3-1 川辺の風景
★64ウジェーヌ・ブーダン 《トゥーク川土手の洗濯女》 1888-95年頃、油彩・板、グラスゴー、バレル・コレクション
3-2 外洋への旅
★67シャルル=フランソワ・ドービニー 《ドルドレヒトの思い出》 1884年頃、油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
撮影可能作品
★72ウィリアム・マクタガート《満潮》 1873年、水彩、グワッシュ・紙(板で裏打ち)、グラスゴー、バレル・コレクション
撮影可能作品
★75ギュスターヴ・クールベ 《マドモワゼル・オーブ・ドゥ・ラ・オルド》 1865年 油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
撮影可能作品
★76ウジェーヌ・ブーダン 《トゥルーヴィルの海岸の皇后ウジェニー》 1863年 油彩・板、グラスゴー、バレル・コレクション
★77カミーユ・コロー《船舶(ル・アーヴルまたはオンフルール)》 1830-40年頃、油彩・紙・板、グラスゴー、バレル・コレクション
★78ウジェーヌ・ブーダン 《トゥルーヴィル、干潮時の埠頭》 1885-90年頃、油彩・板、グラスゴー、バレル・コレクション
79ウジェーヌ・ブーダン 《ドーヴィル、波止場》 1891年、油彩・板、グラスゴー、バレル・コレクション
★80アンリ・ル・シダネル 《月明かりの入り江》 1928年 油彩・カンヴァス、グラスゴー、バレル・コレクション
撮影可能作品
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■ 開催概要
□ 開催期間 2019/4/27(土)~6/30(日) * 2019/5/7(火)、5/21(火)、6/4(火)のみ休館
開館時間 10:00-18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
会場 Bunkamura ザ・ミュージアム (渋谷区道玄坂2-24-1)
主催 Bunkamura、毎日新聞社
協賛・協力等
[後援]ブリティッシュ・カウンシル
[特別協賛]大和ハウス工業
[協賛]大日本印刷
[協力]日本航空
お問合せ ハローダイヤル 03-5777-8600(8:00~22:00)
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■ 巡回スケジュール
□ 福岡県立美術館 2018/10/12(金)~12/9(日)
□ 愛媛県美術館 2018/12/19(水)~2019/3/24(日)
□ Bunkamuraザ・ミュージアム 2019/4/27(土)~6/30(日)
□ 静岡市立美術館 2019/8/7(水)~10/20(日)
□ 広島県立美術館 2019/11/2(土)~2020/1/26(日)
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■ 見どころ
産業革命期に英国随一の海港都市として繁栄したスコットランド・グラスゴー。その地に生まれ若くして家業の海運業を手伝い始めた後、船舶の売買で大成功し莫大な財を築いた海運王ウィリアム・バレル(1861-1958)。
彼は古今東西に及ぶ様々なジャンルの美術作品を収集し、自身で集めた秀逸なコレクションを愛でながら暮らしました。
少年の頃から美術品に関心を持っていたバレルは、1890年代から1920年代にかけて主に画商アレクサンダー・リードから作品を購入し、ペプローやメルヴィルなどスコットランドの画家をはじめ、クロホールなど特にグラスゴーで活躍した画家の作品を好んで集め、徐々にフランス絵画にも興味を抱くようになりました。同時に古今東西の美術工芸品の収集にも意欲を燃やしました。
彼が築いたバレル・コレクション(The Burrell Collection)は、その後1944年に何千点もの作品をグラスゴー市に寄贈されたものの、美術館建設に関しての条件は大きく二つ、「大気汚染の影響が少ない郊外に作品を展示すること」「国外に持ち出さないこと」でした。
そのため永らくイギリス本国でしか公開されていませんでしたが、この世界屈指のコレクションが本国のバレル・コレクション改装に伴い、このたび奇跡の初来日を果たします。
本展では、9千点以上にも及ぶバレル・コレクションにおける良質のフランス絵画を中心にしながら、同コレクションでも重要な位置を占める、スコットランドやオランダ人画家の作品を合わせた絵画73点に加え、バレル・コレクションと同じグラスゴー市内にあるケルヴィングローヴ美術博物館よりルノワールやゴッホの絵画7点を展示します。
英国人コレクターならではのユニークな視点で収集されたこれら全80点(日本初公開76点)の作品を、「第1章 身の回りの情景」「第2章 戸外に目を向けて」「第3章 川から港、そして外洋へ」という構成で展観し、美術史における写実主義から印象派への流れを辿ります。
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■ 序章の解説
落ち着いた雰囲気の作品群
勤勉な実業家バレルが独自の視点で集めた作品群には、彼の控えめで真面目な性格がよく表れています。
19世紀後半の他の実業家のコレクションと共通して、彼の趣味も保守的で、暗い色調の写実的な具象画を好む傾向がありました。
美術史的には写実主義のクールベやバルビゾン派から印象派に至るフランスの作品が中心で、そこに穏やかな色調で風景を描いたオランダのハーグ派や、軽快な水彩画を得意としたスコットランドの画家の作品を加えたかたちになっていますが、全体として落ち着いた雰囲気が通底しているのが特徴です。
なお本展にはバレル・コレクションと同じくグラスゴー市管轄のケルヴィングローヴ美術博物館から印象派の作品7点が補完的に加えられており、内6点がウィリアム・マキネスというグラスゴーの別の海運業者のコレクションで、残り1点はゴッホ作品で市が購入したものです。
1916年、海運王として財を成したウィリアム・バレルは、スコットランドとイングランドの国境にあった自宅であるハットン城にも作品を収蔵し、自身のコレクションに囲まれながら暮らしました。少年の頃からビジネスの世界に身を置いたバレルが、癒しを求めて収集した彼の自慢の絵画群です。
海運王となったサクセス・ストーリー
19世紀末から20世紀にかけてスコットランドの港湾都市グラスゴーは海運業と重工業で空前の繁栄を享受していました。
この町で生まれたウィリアム・バレル(1861-1958)は家業の海運業を15歳から手伝いはじめ、持って生まれたビジネスの才能が徐々に発揮され巨万の富を築くことになりました。
バレル・コレクションの背景には海運王となったこうしたサクセス・ストーリーがあるのですが、美術ファンにとって嬉しいのは彼がその富を美術品収集につぎ込んだことでした。
初めて美術品を買ったのも15歳の頃で、オークションで買ったという早熟ぶり。父親からは、そんなものに金を使うよりクリケットのバットでも買うようにとたしなめられたと言います。
バレルが本格的に美術品の収集を始めたのは20代になって商用でフランスなどに行くようになってからのことで、この時期にエディンバラやグラスゴーで開催された万博もきっかけでした。
そこにはスコットランドの他の収集家からの借用作品が多く展示されていたからです。
美術の見方は独学で学んだバレルでしたが、収集の後押しをしたのは同郷の画商アレクサンダー・リードでした。
リードは同じく画商だったゴッホの弟と親しく、そこから印象派を始めとする当時のフランスの画家たちと直接交流した大物画商で、本展にはゴッホが描いたリードの肖像画も含まれています。
フランス絵画に興味を持っていたのはスコットランドの他の収集家も同じで、18世紀初頭、隣の強国イングランドに併合されながらも独自の政治的地位と文化を保っていたこの「国」は、イングランドに対する特別な感情もあって文化的にはイングランドを越えてフランスに目が行っていたのです。
画商アレクサンダー・リード
アレクサンダー・リードはバレルをはじめ、グラスゴー在住の美術愛好家達に同時代のフランス美術を紹介した人物。
画家のフィンセント・ファン・ゴッホの弟で画商のテオ・ファン・ゴッホと一緒に暮らしていたこともある、敏腕画商でした。
バレルはリードのことを「リードは良質な絵画とそれを愛でる心をスコットランドにもたらした功労者である」と言っていました。
本展では、巨匠ゴッホがリードを描いたアレクサンダー・リードの肖像画も展示します。
01フィンセント・ファン・ゴッホ 《アレクサンダー・リードの肖像》 1887年、油彩・板、ケルヴィングローヴ美術博物館蔵