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村上春樹の短編「三つの短い話」あらすじ・訴求点

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寒い日が続いている。

 

東京都区内の天気

 

12/12(水)雨、

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衛星画像20181216  09:00

天気図20181216  09:00

 

 

昨夜12/17(月)も月 (月齢9.8) を撮影。

浅草の西空

20171217  21:58~22:00

 

 

 

 

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村上春樹の短編「三つの短い話」

文藝春秋・月刊誌「文學界」平成30年7月号

Amazonで購入

 



■ 三編に共通する訴求点


□ 登場する「石のまくらに」の歌集を送って来る「彼女」も、「クリーム」のピアノ演奏会への招待状を送って来る「彼女」も、「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」の「バード」も、全て「幻の人」「夢の中の人」の話。

□ 3編とも数字の「四」や「四の倍数」を多用することによって、「四」==「死」の情景や世界を醸し出すようにしている。

「石のまくらに」・・・「四ツ谷駅」「限定版の28冊目」「メモ用紙に名前と住所を書いて、四つに折りたたんで」「八首」。
 p19「今のとき/ときが今なら/この今を ぬきさしならぬ/今とするしか」という短歌には「今」が四回。

「クリーム」・・・「モーツァルトの四手のための小品」「四阿(あずまや)」「地面には四角い平石」「四角い金属のコンテナ」

「チャーリー・パーカー・プレイス・ボサノヴァ」・・・当編は頻度が少ないがそれでも、「A面に『コルコヴァド』など4曲。B面に『アウト・オブ・ノーホエア』など4曲」

□ 更には「多次元宇宙」「異界」「霊界」を想定させる表現が出て来る。

「クリーム」p34・・・中心がいくつもあって、しかも外周を持たない円。


*


■「石のまくらに」あらすじ


大学2年生(19歳)の僕が、四ツ谷駅近くの大衆向けイタリア料理店でバイトをしていた時に知り合った、年上(20代半ば)の女性と成り行きで一夜を共にする。
「四ツ谷駅」は「螢」「ノルウェイの森」で、主人公の男女が中央線の電車の中で偶然再会し、2人が電車を降りる因縁の駅。

僕は今では名前も顔も思い出せない、それ切り二度と会うことのなかった彼女との一夜を回想する。
彼女は絶頂の時、元カレの名前を呼ぶという悪癖があった。
彼女には短歌を詠む志があり、後日、自作の歌集を送ってもらう約束をし、1週間後に届いた。

僕は昔も今も短歌のことをよく知っている訳ではないのだが、不思議なことに彼女の「ちほ」名義の歌集「石のまくらに」の内の八首が、その後もずっと頭に残り続けることになる。
短歌の殆どは、男女の愛と人の死に関するものだった。
「石のまくら/に耳をあてて/聞こえるは 流される血の/音のなさ、なさ」
「やまかぜに/首刎(は)ねられて/ことばなく あじさいの根もとに/六月の水」
「午後をとおし/この降りしきる/雨にまぎれ 名もなき斧が/たそがれを斬首」
「たち切るも/たち切られるも/石のまくら うなじつければ/ほら、塵となる」
僕は彼女が「死のイメージ」を追い求めていることに気づく。

今、彼女がどこでどうしているのか、生きているのか、もしかしたらもうずっと昔に死んでしまったのか、もちろん僕には分からない。


■「クリーム」あらすじ


ぼくが18歳の時に経験した奇妙な出来事について友人に語っている場面から始まる。
ぼくが、浪人生活を送っていた10月初めに、かつてピアノ教室で一緒だった女の子からピアノ演奏会の招待状が届く。
ぼくが16歳の時まで彼女と同じ先生にピアノを習っていたが、彼女とはそれ以来顔を合わせていなかった。
「羊をめぐる冒険」の引用・・・彼女の姿は僕が昔知っていたある女の子を思い出させた。僕が小学校三年で、まだピアノを習っていた頃の話だ。僕と彼女は年も技術のクラスも同じようなものだったので、何度か一緒に連弾をしたことがあった。彼女の名前も顔も、もうすっかり忘れてしまった。

彼女は、ぼくと連弾をしている時、ぼくが間違えると彼女は嫌な顔をするような子で、特別仲が良い訳ではなかったため、招待状が届いたことは意外だった。
ぼくは、彼女が招待状を送った訳を知りたかったというのもあって、出席の返事のハガキを出した。

会場は神戸の山の上にあり、電車とバスを乗り継いで会場に向かっている途中で、人が余りにも少ないことに気づき、嫌な予感がして来た。
目的の会場らしき建物に着くと、駐車場には車が一台も駐まっておらず、大きな鉄扉には鉄の鎖が巻かれており、固く閉ざされていた。
理由は不明だが、その女の子に騙(だま)されたに違いない。

仕方なく近くの公園のベンチで休んでいると、老人が現れて、奇妙な教えを告げられる。
老人から唐突に「中心が無数にあって、外周を持たない円を思い浮かべるか」と尋ねられた。そのような円を想像するのは、ぼくには難しかった。
老人は「時間をかけてむずかしいことを成し遂げたとき、それがクリームの中のクリームに、とびっきり最高のクリームになる」と言った。
ぼくは、老人が問い掛けた円についての禅問答を必死に考え続けたが、結局分からなかった。諦めて目を開けると老人はいなくなっていた。



■「チャーリー・パーカー・プレイス・ボサノヴァ」あらすじ


「僕」は大学生の時、或る大学の文芸誌に、1955年に亡くなっている筈のバード・チャーリー・パーカーが1963年まで実は生きていて、突然、ボサノヴァのアルバムを発表した、という全くの作り話(でっちあげ)をレコード・レビュー(批評)という形で掲載してもらった。
チャーリー・パーカーは、モダン・ジャズの創始者と言われたアルトサックス奏者で、それまでスイングが主体であったジャズをビパップへと切り替えた立役者。
「ポートレイト・イン・ジャズ ~ナット・キング・コール」の引用・・・「国境の南」も彼の歌で聴いた覚えがあって、その記憶をもとに「国境の南、太陽の西」という小説を書いたのだけれど、あとになってナット・キング・コールは「国境の南」を歌っていない(少なくともレコード録音はしていない)という指摘を受けた。==中略== 現実に存在しないものをもとにして、僕は一冊の本を書いてしまったわけだ。

ところがそれから15年後、仕事で滞在していたニューヨークの中古レコード店で「僕」は「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」というレコードを発見する。
そのレコードを買うか迷ったが、誰かのイタズラであると思い、そんなものに35ドルも払いたくなく、結局買いそびれた。
改めて店に行ってみると、そのレコードは見当たらず、店主にもそんなものは何処にも存在しないと言われる。

時が過ぎて、或る夜、僕の夢にC・パーカーが出て来て、何と雑誌で書いた架空のアルバムに収録されたうちの1曲を僕のために演奏してくれると言うのだ。
彼は僕が架空の文章を書くことでボサノヴァ音楽を演奏することができたことを、今一度の生命を与えてくれたと感謝を述べた。
夢から目覚めた後、チャーリー・パーカーが僕のために演奏してくれた音楽を再現しようと試みたが、上手く行かなかった。
しかし、夢や現実に関係なく、実際に体験したことに変わりはない。



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■ 村上春樹氏の近年(2013年以降)の著作と私のブログ


「パン屋を襲う」新潮社・絵本2013年2月刊行(ブログ2016-04-22記)

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」文藝春秋社・単行本2013年4月、文春文庫2015年12月刊行(ブログ2013-04-17記)

「恋しくて―Ten Selected Love Stories」中央公論新社・単行本2013年9月、中公文庫2016年9月刊行(ブログ2013-09-26記)

「女のいない男たち」文藝春秋社・単行本2014年4月、文春文庫2016年10月刊行(ブログ2014-03-15記)
 

「図書館奇譚」新潮社・絵本2014年11月刊行(ブログ2016-04-22記)

「職業としての小説家」スイッチ・パブリッシング単行本2015年9月刊行(ブログ2015-08-26記)

「ラオスにいったい何があるというんですか?」文藝春秋社・単行本2015年11月刊行、文春文庫2018年4月刊行(未読)

「騎士団長殺し第1部 顕れるイデア編」「騎士団長殺し第2部 遷ろうメタファー編」(新潮社・単行本2017年2月刊行)(未読)        
 

 

 


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