昨晩10/25(木)はこれまでも触れたように、「満月」(月齢16)。
浅草の東の夜空
20181025 21:41
一方、南南西の空には、明晩に「内合」(地球と太陽の間に入る)となる
火星が赤味を帯びていた。
20181025 22:12
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一昨日10/24(水)、久し振りに区立図書館へ行った。
そこで伊坂幸太郎氏の棚で、「クリスマスを探偵と」および東野圭吾氏の「危険なビーナス」をゲット!!
早速、前者の絵本に目を通した。
■ 伊坂幸太郎の絵本「クリスマスを探偵と」あらすじ・感想
文: 伊坂幸太郎、絵: マヌエーレ・フィオール
初出は特集ムック「文藝別冊 伊坂幸太郎」河出書房新社2010年11月
単行本「クリスマスを探偵と」河出書房新社2017年10月
□ 伊坂幸太郎「生まれて初めて完成させた短篇が元となった作品です」。
大学1年生の時(1991年20才)に著者が初めて書いた小説(初出は「文藝別冊 伊坂幸太郎」)を自身の手により完全リメイク。
舞台はドイツ。探偵・カールがクリスマスの夜に出会った不思議な男とは……?伊坂幸太郎が贈る聖夜の奇跡の物語。
伊坂作品にはお馴染み、あのキャラクターの元祖とも言える人物も登場。デビュー以来の伊坂作品のモチーフ、「探偵」「男2人」「親子愛」「巧妙な構成」「ラストのどんでん返し[龕灯(がんどう)返し、英訳surprise (twist) ending」・・・などのエッセンスが全て凝縮された珠玉の物語。
□ マヌエーレ・フィオール「お話の最後ではいつも呆然となり、もう一度読み直したい気持ちで胸がいっぱいになりました」。
フランス在住のバンドデシネ[フランス語bande dessinée (BD)] 作家マヌエーレ・フィオールによる描き下ろしイラスト付オールカラー絵本。
マヌエーレ・フィオール (MANUELE FIOR)の略歴: 1975年イタリアのチェゼーナ生まれ。2000年建築学の学位をヴェニスで取得後、2005年までベルリンで漫画家、イラストレーター、建築家として働く。2011年『秒速5000km』(“Cinq mille kilomètres par seconde”)でアングレーム国際漫画祭最優秀作品賞を受賞。他の作品に『エルザ嬢』(“Mademoiselle Else”)など。バンド・デシネ作家として松本大洋をはじめ日本の漫画界からも大きな注目を集めている。
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□ 概要
ドイツ南部バイエルン州フランケン地方の大都市ローテンブルク(Rothenburg)は、中世都市の代表的なシンボル都市として日本の"小京都"のように全国各都市の冠(かんむり)になっている。そして、マルクト広場(Marktplatz)ではクリスマスシーズンには世界有数の「クリスマス市場」が盛んに立つ。特にローテンブルクは町の規模こそ小さいけれど、市の人気はNo.1でロマンチック街道のハイライトとなっている。
そのローテンブルクを舞台とした本作は、伊坂幸太郎氏が東北大学法学部1年生の時に初めて完成させた短編作品であると言う。この処女作をクリスマスの時期に合わせて、2010年11月---映画「ゴールデンスランバー」公開の年---に初出、7年後の昨2017年10月に絵本化した。
この第一作にはしっかりと、後に伊坂ワールドを形成するキャラクターたちが登場して来る。
「チルドレン」(2004)、「サブマリン」(2016)の家裁調査官・陣内の元祖と思しき主人公・探偵カール。
「死神の精度」(2005)、「魔王」(2005)、「死神の浮力」(2013)の死神・千葉(あるいは安藤)の元祖と思しき謎の男(サーカス曲芸師を仮の姿にしたサンタのひとり)、2人の同僚男クランプス。
サンタクロースの起源は---
トナカイに乗って空を飛ぶ妖精は古くから贈り物を届けて来た ⇒ サンドラ・クロス(Sandra・Cross)。
一方、三世紀に贈り物をして子供を守る謎の男・聖ニコラウスに因んで ⇒ シンタークラース(Shinterklaas) 。
世界中の貧しい家庭の子供をリストアップし、複数分担制のサンタクロースにトナカイを割り当てて、離陸して行く壮大なプロジェクト計画。
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□ 詳細
主人公は探偵カール。
カールが画材屋家族3人で暮らしていた頃のこと。
サンタクロースを信じて待っていたカールは、毎年父に欲しいものをそれとなく告げていて、父はそれを叶えてくれていた。
或る年、家計が厳しいことを承知で、試しに高価な自転車を希望してみた。ところが何とそれがプレゼントされたのだ。
しかし、その費用は、母が大事にしていた指輪を売って父が捻出したらしく、母親が激怒して激しい夫婦喧嘩になってしまう。
それ以後、カールは自分を悔み家を飛び出し、両親とは音信不通になった。だが随分、経ってカールの行方が母に知られるところになり、今は探偵の仕事をしていると、時々電話で話すようになった。
母から父の素行調査を頼まれる。父が時折り長い髪の抜け毛を付けて帰宅することがあるため、不倫を疑っていた。3人で暮らしていた時にもそんなことがあったようなので、長く続いている素行らしかった。
ローテンブルグの街を、弛(たる)んだ腹の途或る50過ぎの男を尾行し、浮気調査をしている。調査対象の男が、投資家の中年女性の豪邸へ入って行くのを見届けて、カールは暫く出て来ないだろうと公園で休憩する。
と、公園のベンチに偶然、居合わせた先客の若い男に声を掛けられ、探偵であることを見透かされて驚く。カールは観念したかのように浮気調査中であることを明かす。
その後は、ドイツ統一やワールドカップなど、色々な話をし、クリスマスやサンタクロースの話へ展開して行く。
そして「嫌な経験があるんだ」と、カールはクリスマスの経験を明かし、男は「よければ僕に話してみてくれませんか」と聞き返す。
カールは身の上話を始める。父が常に機嫌が悪く母に当たっていたこと、浮気の気配があったこと、家が裕福でないのにクリスマスに高い自転車を頼んだことなど・・・。
クリスマスプレゼントをもらうことはできたが、父が母の大事な指輪を売って自転車を買ったことに母が激怒している姿を見て、カールは家出し探偵になったことまで明かす。
更に今、尾行している男が "カールの父親"であることも明かしてしまう。
そこで男は切り出す。「こじつけ、というのは嫌いですか?」。男はカールに「可能性のゲーム」を持ち掛ける。「カールさんのお父さんが、本当のサンタクロースだと考えたら、どうでしょう?」
と、男のこのセリフから物語は急展開して行く。そして最後には心温まるドンデン返しが待っている。
謎の男は、「もしかしたら、お父さんはサンタクロースで、つけて帰ってきた長い毛はトナカイの毛だったのかもしれません」「お父さんがこの家を訪ねた理由も、探し回っていたあの指輪を取り戻すことだったかもしれない」。仮説から仮説へ。
職業柄ネガティブな思考を持つ探偵カールの感情が、公園にいた若い謎の男によって解きほぐされて行く。
華やかなクリスマスらしさはないが、最後にドンデン返しがあり、心温まる展開でとても優しい気持ちに成れる。
サンタクロース、2人の鬼クランプス(日本のナマハゲ)。
表紙のキャッチコピー「かつての子どもたちへ これからの大人たちへ」にもあるように、大人向きの絵本である。
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■ 伊坂幸太郎氏の著作リスト
□ 私のブログ(2010~2013年)
「重力ピエロ」
「ラッシュライフ」
「アヒルと鴨のコインロッカー」
「フィッシュストーリー」
伊坂幸太郎ワールドが求めるもの
「陽気なギャングが地球を回す」
「ゴールデンスランバー」
「グラスホッパー」
「チルドレン」
「終末のフール」
「魔王」---伊坂幸太郎ワールドのまとめ
「あるキング」
映画「ゴールデンスランバー」感想
「SOSの猿」
「AX」(アックス)
「死神の浮力」
殺し屋シリーズ「グラスホッパー」「マリアビートル」「AX」「BEE」の整理
「僕の舟」
「死神の浮力」Ⅱ
「PK」
「残り全部バケーション」
「ガソリン生活」
「死神の浮力」
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□ 私のブログ(2014年~)
「首折り男のための協奏曲」(新潮社2014年1月、新潮文庫2016年11月)
「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎2014年9月、幻冬舎文庫2017年8月)
「キャプテンサンダーボルト」(阿部和重との共作、文藝春秋2014年11月)
「火星に住むつもりかい?」(光文社2015年2月、光文社文庫2018年4月)
「陽気なギャングは三つ数えろ」(祥伝社ノン・ノベル2015年10月、祥伝社文庫2018年9月)
「サブマリン」(「チルドレン」の続編、講談社2016年3月)
「クリスマスを探偵と」(河出書房新社2017年10月) ・・・全国学校図書館協議会選定図書
「AX」(KADOKAWA2017年7月) 未読
「ホワイトラビット」(新潮社2017年9月) 未読
「フーガはユーガ」(実業之日本社2018年11月) 未読
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