5/31(火)NHK-FM14:00~15:55「クラシックカフェ」(ナビゲーター: 粕谷紘世)を聴いていたところ、
ポーランドの女性作曲家テクラ・ボンダジェフスカ=バダジェフスカ(Tekla Badarzewska Baranowska)の美しい曲が流れて来た。
「乙女の祈り」「マズルカ」「森のこだま」・・・ピアノ演奏ユリヤ・チャプリーナ。
最後、森の泉に葉から水滴が零れるような。
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1834年(38年説もあり)、ワルシャワの北北西100kmの町ムワヴァ(Mława)の生まれ。父は警察官。
1855年(20~21歳)、ピアノ曲「乙女の祈り」(Modlitwa dziewicy, 仏La prière d'une vierge)を作曲し、パリの音楽ニュース雑誌に掲載。欧米で100万部以上売れ、その名が広く知られた。
聖らかであり儚(はかな)くもあるピアノの響き。
本国ポーランドの19世紀音楽事典では、「浅薄な素人臭さを超えられなかった」と酷評された。
その後もソ連共産圏の下で、「祈り」の言葉や19世紀サロン音楽のレッテルで、評価されないままだった。
J・バラノフスキと結婚し5人の子供を儲けた。
35曲ほど作曲したが、1861年9月29日(27才)で産後の病魔に襲われワルシャワにて夭折した。
ワルシャワの木立の中にある墓地はひっそりと訪れる人もなく、「乙女の祈り」の楽譜を手にしたバダジェフスカ像が立っている。
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日本では明治時代に、「乙女の祈り」はピアノ教本と共に楽譜が持ち込まれた。
その後も、オルゴール曲の定番として日本で広く愛されて来た。
1960年、ザ・ピーナッツの曲として改変されて(編曲・宮川泰、補作・すぎやまこういち)リリースされた。
2007年、日本のコンクールで優勝したロシアの新鋭ピアニスト、ユリヤ・チャプリーナ(当時20才)のピアノ演奏によるボンダジェフスカ作品集がリリースされた。
「かなえられた乙女の祈り バダジェフスカ作品集」 (英TEKLA BADARZEWSKA, 仏LA PRIERE D`UNE VIERGE)
発売日: 2007年10月24日
作曲: テクラ・バダジェフスカ(Tekla Badarzewska)
ピアノ演奏: ユリヤ・チャプリーナ(Julia Chaplina)
発売元: キングレコード、総曲数: 17
メーカー品番: KKCC-3019 JANコード: 4909346717633
1.乙女の祈り、2.乙女の感謝、3.マズルカ「甘き夢」、4.マグダレーナ、
5.マズルカ、6.天使の夢、7.エオリアン・ハープ、
8.第2の乙女の祈り、9.幻影、10.友愛、11.田舎小屋の思い出、12.母の祈り、
13.森のこだま、14.信仰、15.希望、16.愛、
17.かなえられた祈り (乙女の祈りへの返歌)・・・暗い旋律~美しい旋律~「乙女の祈り」の旋律。楽譜の最後の和音に「estinto」(ppp)という指示あり。
近年、日本に留学したポーランド人、ワルシャワ大学日本語学科の女子学生ドロタ・ハワサさんらにより、ボンダジェフスカの存在が再発見され、彼女の業績を広く知ってもらうための活動が実を結び、母国ポーランドでも少しずつ再評価がなされて来ている。