■ 8月5日は「ハンコの日」
山梨県甲府市の印判総合商社「モテギ(株)」(山梨県甲府市相生町2-10-12) が「ハ(8)ンコ(5)」と読む語呂合わせから、8月5日を「ハンコの日」に制定した。
この日とは別に、10月1日は「公益社団法人 全日本印章業協会」(東京都千代田区神田神保町2-4 印章会館2F) が10月1日を「印章の日」と制定している。
□ ハンコの語源
はんこの漢字とその別名・類語は夥(おびただ)しい数に及ぶ。
印/印章/判/印判/印形/印顆/スタンプ/印鑑/押し手/手判/手印/実印/銀行印/認印/三文判/ゴム印/インキ浸透印/社判/会社印/社印/落款印/蔵書印。
▽ 中国における語源
「節」という漢字の省略体として「印」という漢字が生まれた。それは「卩」[ひざまずく] +「爪」(下向きの爪・指の節) とで構成され、跪(ひざまず)かせて押さえ付けながら爪や指で「印」(「記」、しるし)」を付けさせる行為を指している。
▽ 日本語の定義
「印章」・・・印材の平らな面(印面)に名前を彫刻した本体部分のことで、いわゆる「ハンコ(判子)」。
「印影」・・・印面に朱肉を付けて紙に押して残る文字。
「印鑑」・・・「鑑」とは「見分ける」という意味。都道府県市区町村などの役所(自治体)や銀行・保険・証券などの金融機関に届け出て登録され、その「印章」の所有者が明確で真偽を確認することができる「印影」を指す。
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□ ハンコの歴史
紀元前5000年頃の古代メソポタミア文明では、粘土板や封泥の上に楔形(くさびがた)文字の記録と「スタンプ型印章」を押す文化が誕生した。
紀元前2600年頃、メソポタミア南部のバビロニアなどシュメール都市文明/初期王朝時代に、動物と戦う英雄を描き粘土板の上で転がす「円筒印章」(「シリンダーシール」)へと変化した。
紀元前3000年頃、古代エジプト文明で、ヒエログリフ(神聖・聖刻な象形文字)が刻印された宗教性をもった「スカラベ型印章」。
紀元前2600~1800年頃、インダス文明で、インダス文字・動物(実在と架空)などが刻まれた凍石(soapstoneなどのsteatite)製の「インダス式印章」。
古代中国・殷朝(紀元前1700~1046年)では、図象を鋳成した「青銅印」が使われた。
秦の初代皇帝・始皇帝(在位・紀元前221~210年)が政府の文書に「璽印」(じいん、玉に刻んだ印形(いんぎょう)、中国では天子様の用いる印)を用いることを始めた。
璽印
出典
前漢の第7代皇帝・武帝(在位・紀元前141~87年)が高級官吏の印を「印章」と呼ぶ制度を取り入れた。
漢朝から南北朝に至るまで(紀元前206年~紀元後589年)、古代文字・篆(てん)書体の「漢印」が使われた。
漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん)
弥生時代の紀元後57年、中国・後漢國の初代皇帝・光武帝(在位25~57年)が日本の倭奴国 [わのなのくに/わどこく、史書「後漢書倭伝」「魏志倭人伝」にみえる古代中国人が日本を指して呼んだ蔑称。1~3世紀に掛けて北九州(現在の福岡県博多付近)に存在していた儺県(なのあがた)・那津(なのつ)など] の使節に印綬 [天子が臣下に与える綬(くみひも)の付いた印] を与えた。江戸時代の1784年に博多湾志賀島(しかのしま)で出土された純金製の「漢委奴國王」。1931年に国宝保存法に基づく旧国宝、1954年に文化財保護法に基づく国宝に指定されている。
出典wikipedia
692年、飛鳥朝の持統天皇に「木印」を神祇官が奏上したと「日本書紀」に記され、701年、大宝律令の制定とともに「官印制度」が導入された。
平安時代後期~鎌倉時代初期(12世紀頃)、意匠化された署名として「花押」が主流となって行った。
室町時代(15世紀頃)以降、中国・宋朝出身の禅宗僧侶たちを通じ、書画に用いる「印章」が復古した。
戦国時代には「花押」に掛かる手間を簡略化するため、大名の間で文書を保証する用途に略式の署名として「印章」が普及して行った(織田信長の「天下布武」など)。
武将花押 出典https://www.aiweb.or.jp/
江戸時代には行政上の書類のほか私文書にも印を押す慣習が広がるとともに、「実印」を登録させるための印鑑帳が作られるようになり後の印鑑登録制度の起源となった。
木版画に使用された版木を「版行/板行(はんこう)」と呼んだ。版行(板行)は、図書や文書を判木で印刷し発行すること(刊行や出版と同じ意味)。それが印章で印影を捺印することが混同された。18世紀後半頃より、音変化して「はんこ」と呼ばれ、暫くは「はんこう」と「はんこ」の両方が使われ、そのうちに漢字の当て字で「判子」と書くようになった。
このように日本で広くはんこが普及したのは江戸時代の中期になってから。商人は取引の際に使い、より一般的になって行った。
明治新政府は印章の偏重を悪習と考え、欧米諸国に倣(なら)って署名の制度を導入しようと試みたが、事務の繁雑さや当時の識字率の低さを理由に反対意見が相次ぎ、議論の末に近代の郵便制度や銀行制度などで、1900年までに殆どの文書において自署の代わりに記名押印すれば足りるとの制度が確立した。
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□ 現代日本におけるハンコの主な種類
「認印」・・・下記の「実印」および「銀行印」を除く、申込・届出・受領など日常の証明用に頻繁に用いられる印章。氏(姓・苗字)のみが彫られた既製品を使うケースが圧倒的に多く、二束三文の故事成語を捩(もじ)って安っぽいという意味で"三文判"と俗称され、シャチハタに代表される「スタンプ印」(ネーム印・インク浸透印)まで利用されている。
「実印」・・・法律(印鑑登録制度)に基づき所管の役所(自治体)に登録した印章。「印鑑登録証明書」が発行され、身分証明・財産登記など重要書類に使用されるので、偽造を防ぐため個別に製作された氏名のフルネームで彫られることが多い。
「銀行印」・・・銀行・保険・証券会社などの金融機関に口座開設する際に届け出た印。「実印」と異なり各金融機関毎に規定が定められている。